よくある誤解 / 12
米国の判決で、AI学習はすべて合法、またはすべて違法と決まった?
結論
米国の個別の判決から、すべてのAI学習の合法・違法を一括して決めることはできません。
もう少し詳しく
米国の個別の判決から、すべてのAI学習の合法・違法を一括して決めることはできません。 学習の目的だけでなく、データをどう取得したか、市場へどんな影響があるか、当事者が何を立証したかを読む必要があります。日本の著作権法30条の4とは別の制度です。
なぜ一つの勝敗で全学習を判断できないのか
米国のfair useは、利用目的・性質、元の著作物の性質、利用量・重要性、市場等への影響という4要素を検討します。Bartz事件の2025年6月23日決定は、対象となった学習利用をfair useとしましたが、海賊版を汎用ライブラリとして取得・保管する行為まで同じ理由で認めたわけではありません。
Kadrey事件の同年6月25日決定も、当該原告13人の主張・証拠についての判断です。裁判所は、この判断がすべてのAI学習を合法とするものではないと明記しています。逆に、Ross事件の同年2月11日判断は、競合する法律検索の開発で判例要旨を使った事案で、本文は非生成AIだと明示しています。これを生成AIの全面禁止判決とするのも不正確です。
この説明で言えないこと
これらは地方裁判所の個別判断であり、全モデル・全出力を免責するものではありません。引用した決定の後の和解・上訴等を含む、各事件の現在の終結状況は本稿では未確認です。取得、学習、生成物の公開を一つの行為にまとめることもできません。
適法な利用の例
米国で必要な権利を自ら持つ資料、または目的に合う許諾を得た資料を学習に用い、出力も第三者の権利を侵害しない形で利用することが考えられます。許諾がある場合でも、その対象・用途・期間を確認します。
一次資料のどこに書いてある?
- 米国著作権局掲載17 U.S.C. §107:fair useの4要素。
- 連邦地裁Bartz v. Anthropic, Doc.231(2025-06-23):pp.1・31–32、学習利用と取得・保管を分けた結論。
- 連邦地裁Kadrey v. Meta, Doc.598(2025-06-25):pp.4–5・40、対象原告と立証の範囲。
- 連邦地裁Thomson Reuters v. Ross Intelligence, Doc.770(2025-02-11):pp.17・19(非生成AIの明記)、pp.17–19・23(fair useの検討)。PDFは米国政府GovInfoの掲載資料です。