よくある誤解 / 31
二次創作ガイドラインに「AI学習禁止」「AIへの入力禁止」とあれば、自分で楽しむ使い方も禁止される?
ガイドラインに書いても、法律が許諾なしで認めている使い方は禁止できません。
もう少し詳しく
ガイドラインに書いても、法律が許諾なしで認めている使い方は禁止できません。 自分や家族の中で楽しむための複製・翻案(私的な使用)や、学習のような情報解析は、著作権法が許諾を要しないと定めた利用です。二次創作のガイドラインは、許諾が要る使い方(主に公開)について条件を示す文書なので、「AI学習禁止」「AIへの入力禁止」と書いても、許諾の要らない使い方には及びません。一方で、公開を禁じることや、公開の条件を決めることは、ガイドラインの本来の役目です。
なぜガイドラインの禁止が届かないのか
著作権法は、私的な使用を目的とする複製を、使う本人ができると定めています(30条1項)。同じ場面での翻訳・翻案もできます(47条の6第1項1号)。作品の本文をAIに貼って別の版の場面を書かせ、自分で読む、といった使い方は、権利者の許諾を前提にしていません。学習などの情報解析も、30条の4の条件の中で、許諾なしにできます(解説02)。
ガイドラインは、著作権者が出す「利用の許諾」です(63条1項)。許諾を受けた人は、許諾された方法と条件の範囲で利用できます(63条2項)。ガイドラインの条件が意味を持つのは、許諾がなければできない使い方についてです。許諾の要らない使い方に、許諾の条件はかかりません。
文化審議会の整理も、権利制限規定は著作権者の許諾なく著作物を利用できることとするものであり、著作権者が反対の意思を示していることそれ自体をもって、権利制限規定の対象から除外されると解釈することは困難だ、としています。この整理は30条の4の検討の中にありますが、理由は権利制限規定一般の趣旨から述べられています。
身近な例では、適法に買った本を中古で売ることに、作者の許可は要りません(26条の2第2項1号)。作品を正当な範囲で引用して批評することも、法律が認めています(32条1項)。どちらも、本に「禁止」と書いて止められるものではありません。「AI学習禁止」「AIへの入力禁止」と私的な使用・情報解析も、同じ関係にあります。
公開は別です。私的な使用のために作ったものを配ったり公開したりすると、そのときに複製・翻案をしたものとみなされます(49条1項1号・2項1号)。公開には許諾が要るので、「公開しないで」「この条件でなら公開してよい」というガイドラインは、法律と整合します。「翻案の公開は禁止。ただし私的な使用は禁止しない」という書き方なら、法律の線と一致します。
法的な効力のない「お願い」をガイドラインに書くこと自体は、書く人の自由です。読む人は、それを守るかどうかを自分で決められます。ただ、お願いがあることで、私的な使用が違法になるわけではありません。AIを使うこと自体を犯罪のように言うのは、法律の説明として誤りです(解説01)。
この説明で言えないこと
私的に作ったものを公開してよい、とは言えません。公開するときは、その作品のガイドラインと、既存の作品との類似性・依拠性の判断に従います。私的な使用は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲」での使用で、人に配る・見せるときは公開と同じように確かめます。AIサービスやアプリの利用規約は、作品のガイドラインとは別の、利用者が同意して使う約束です。日本の外の法律は確かめていません。
「AI学習禁止」の表示と30条の4の関係、契約や技術的な制限との違いは解説04で、参照としての入力が学習にあたるかは解説32で扱っています。
一次資料のどこに書いてある?
- 著作権法:30条1項(私的使用のための複製。1〜4号の場合を除く)、30条の4(享受を目的としない利用)、47条の6第1項1号(私的使用の場面での翻訳・翻案)、49条1項1号・2項1号(目的外の頒布・公衆への提示)、63条1項・2項(利用の許諾と、その方法・条件の範囲)、26条の2第2項1号(適法に譲渡された複製物の譲渡)、32条1項(引用)。2026-10-27に公式の条文データで確認。
- 文化審議会法制度小委員会『AIと著作権に関する考え方について』(2024-03-15):本文pp.25–26(権利制限規定の趣旨と、反対の意思表示だけでは対象から除外されないこと)、pp.37–38(生成の指示のための入力と、私的使用目的の複製の適用)。公的な解釈資料であり、裁判所を拘束する判決ではありません。