よくある誤解 / 17
AI事業者は、学習に使った全作品の一覧を公開する義務がある?
学習内容の公開要約、当局への資料提供、個別の照会への対応は、全作品の一覧公開と同じではありません。
もう少し詳しく
学習内容の公開要約、当局への資料提供、個別の照会への対応は、全作品の一覧公開と同じではありません。 国・地域と事業者の役割を特定して、どの情報を誰に示す制度なのかを読みます。
なぜ「開示」と書いてあれば全データ公開とは言えないのか
日本: 政府の『生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード』は、学習データの種類や収集方法等の概要開示、条件を満たす照会への回答などを扱います。ただし、法的拘束力を有する規範ではなく、原則を実施するか、実施しない理由を説明する手法です。全作品を誰にでも強制的に開示する法令と読み替えることはできません。
EU: AI法53条1項(d)は、汎用AIモデル提供者に、AI Officeのテンプレートによる学習内容の十分に詳しい要約の公開を求めます。同項(a)の技術文書の当局への提供、(b)の組み込み先の事業者への情報提供は、相手も目的も異なります。2項の一定のオープンソースモデルについての例外は(a)(b)の義務に限られ、(c)(d)まで一括免除するものではありません。
この説明で言えないこと
要約でよければ内容は何でもよい、という意味ではありません。EUのテンプレートを踏まえた具体的な記載の充足性は、本稿では評価していません。日本でも別の法令による手続や契約上の開示はあり得ます。非開示だから直ちに侵害、開示したから必ず適法、という結論も出せません。学習の有無だけで個別出力の侵害がすべて決まるわけではありません。
適法な利用の例
必要な権利を確保した素材で制作する利用者が、提供者の公開情報からモデルの版・データの概要・利用条件を確認し、疑問がある場合は適切な窓口で照会することが考えられます。受け取った情報は、秘密保持や個人情報等の条件に従って扱います。
一次資料のどこに書いてある?
- 内閣府知的財産戦略推進事務局『生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード』(2026-10-05掲載版確認):p.4、1(3)(法的拘束力と採用する手法)、pp.6–7(原則1の概要開示)、pp.8–14(原則2・3の照会と条件)。日本の制度です。
- 欧州委員会公式サービスデスク掲載AI Act 53条:1項(a)〜(d)、2・7項。公開要約と、提供先の異なる資料、秘密情報の取扱いを区別しています。
- 同113条:第V章の適用は原則2025-08-02から。111条:3項(それ以前に市場へ出た汎用AIモデルは2027-08-02までの経過措置)。EUの制度です。