よくある誤解 / 15
著作権がなければ、他人の顔や声を無断で再現してよい?
結論
日本では、著作権の対象でないことだけを理由に、他人の顔や声を自由に利用できるとは言えません。
もう少し詳しく
日本では、著作権の対象でないことだけを理由に、他人の顔や声を自由に利用できるとは言えません。 人物についての利益と、写真・実演・録音等に関わる権利を分けて検討します。
なぜ著作権だけでは判断できないのか
政府の『AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ』は、他人の肖像を含む生成物について、肖像権やパブリシティ権の侵害が問題になり得ると整理しています。パブリシティ権は、人物の顔等が持つ顧客を引き付ける力を専ら利用する目的かどうかが判断に関わります。
声については、同報告は、顔の撮影についての肖像権をそのまま声へ広げることには慎重な一方、一定の利用態様でパブリシティ権による保護が考えられるとしています。また、具体的な音声が著作権法上の実演なら著作隣接権の検討があり、声そのものとは区別します。元の実演やレコードの複製と、似た声の生成を同じ権利問題として片付けることもできません。
この説明で言えないこと
似た顔や声がすべて違法、または同意なしの利用がすべて免責される、とは言えません。声の人格的な保護の範囲を本稿で一律に確定することもできません。本人の同意があっても、写真の撮影者や録音・実演等の別の権利、利用契約の条件が残る場合があります。学習、生成、広告等の利用を分け、何を許されたかを確かめます。
適法な利用の例
本人と素材の権利者から、必要な学習・生成・公開・商用利用の範囲を定めた許諾を得て、約束した用途の案内音声や画像を作ることが考えられます。本人が実際に発言・推薦したものと誤認させない使い方も必要です。
一次資料のどこに書いてある?
- 内閣府知的財産戦略推進事務局『AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ』(2024-05、内閣官房掲載):本文pp.33–34、III・2(6)(肖像権・パブリシティ権と生成AI)、pp.55–57、III・5(2)(声の保護、実演との区別、なりすまし等)。判例を参照した政府の整理であり、すべての声の生成についての確定判決ではありません。
- 著作権法:2条1項3〜6号(実演・実演家・レコード等)、91条(実演の録音・録画)、96条(レコード製作者の複製権)。許諾や権利制限の検討を省いて一律に適用するものではありません。
- 民法:709・710条(他人の権利・法律上保護される利益の侵害と損害賠償)。条文だけで声の保護範囲が一律に確定するわけではありません。