よくある誤解 / 27
AI音声を使うとき、本人の許可は誰から何について得る?
声の本人への同意確認、録音や台本の権利処理、音声サービスの利用条件は別々です。
もう少し詳しく
声の本人への同意確認、録音や台本の権利処理、音声サービスの利用条件は別々です。 必要な許可は、どの素材を使い、誰の声を再現し、何を話させ、どこで利用するかによって変わります。「本人が一度了承した」「サービスが使えた」だけでは確認は終わりません。
なぜ一つの許可では足りないのか
第一に、本人に関する利益です。文化審議会の2025年の検討報告は、声そのものに著作権法上の権利は及ばない一方、パブリシティ権や一般不法行為による保護の可能性等について意見があったと整理しています。声の保護一般は解説15の論点です。ここでは、その未確定な範囲を「似た声には常に同意が法律上必須」や「同意は一切不要」と読み替えません。特定人物の声として広告等に使うなら、本人のどの利益に関わるかを検討し、合意する用途を具体化する必要があります。
第二に、素材に関する権利です。声を提供する本人が、その録音や台本のすべての権利を持つとは限りません。具体的な実演の録音・利用には実演家の権利、既存の録音の複製にはレコード製作者の権利、創作的な台本の利用には著作権などの検討があります。許諾が必要な行為なら、それぞれの権利者から対象・条件に合う許諾を得ます。権利制限の適用がある場合もあるため、素材のあらゆる処理に必ず許可が要るという意味ではありません。
第三に、サービスの条件です。MicrosoftのProfessional Voiceの公式手順では、音声の微調整の前に、話者本人による同意文の録音を提出することが必要です。これはそのサービスを利用するための要件であり、日本法が全AI音声に同じ録音の提出を義務付けたわけではありません。また、この提出だけで台本の権利や広告出演の合意まで取得したことにもなりません。
合意を得る場合は、素材の学習利用、新しい台詞の生成、公開する媒体・期間、広告等の用途、第三者へのモデル提供を区別して範囲を定めます。終了後の取扱いや、用途を変える際の追加確認も決めておくと、当初の合意を越えた利用を避けやすくなります。これは制作時の提案で、すべてが法律で一律に要求される契約条項ではありません。
この説明で言えないこと
具体的な広告・声真似・パロディーが適法かは、個別の事情なしには判断できません。本人同意があれば何を言わせてもよい、素材の利用許諾があれば本人の推薦と表示してよい、という説明でもありません。個人情報の取扱いと、日本以外の法制度も別に確認が必要です。似ていることだけから本人が関与・許諾したとも推測できません。
具体的な利用例
話者に協力を依頼し、自作台本から施設案内を合成するなら、まずその施設の案内用という範囲で、録音・学習・新しい台詞の生成・再生の合意を得ます。録音や台本に別の権利者がいる場合は、その条件も確認します。後から商品の推薦広告に転用したくなったときは、当初の合意に含まれるかを確かめ、含まれなければ必要な追加の合意を得る、という進め方です。
更新日
2026-10-05(日本時間/JST)更新。
一次資料のどこに書いてある?
- 文化審議会『令和6年度法制度に関するワーキングチームの検討の経過等について』(2025-02-28):pp.1–2、2『AIと著作権制度に関することについて』。声そのものと著作権法の区別、他の保護の可能性についての意見を掲載。裁判所を拘束する判断ではありません。PDF頁と本文頁は一致します。
- 著作権法(日本):2条1項1・3〜6号(著作物・実演・レコード等)、21条(複製)、63条1・2項(許諾の方法・条件)、91条(実演の録音・録画)、96条(レコードの複製)。声質が似ていることだけに、91・96条をそのまま当てはめる説明ではありません。
- Microsoft公式『Add voice talent consent for professional voice』(2026-10-05確認):冒頭の話者の定義と同意文の提出要件、Add voice talent(本人・用途等の登録)。この製品の公式利用手順を参照しており、全サービスの規約や法律の代わりにはしません。